問題 A氏・B氏・C氏の3人が拳銃で決闘をすることになった。A氏は射撃の腕が未熟で命中率は1/3(33%)しかない。B氏はそれよりも多少はましで2/3(66%)ある。C氏は射撃の達人で命中率は100%。もちろん拳銃の弾が命中すれば死ぬ。 決闘の方法は、1人ずつ順番に拳銃を1発ずつ発射する権利を得るというものだ。まず最初にくじ引きで順番を決める。最初の人が誰かを狙って拳銃を1発だけ発射する。2番目の人が生き残っていれば拳銃を1発撃てるし、死んでいれば次の順番の人が1発撃つ。以後1人が生き残るまでこれをくり返す。 さて、くじ引きの結果、A氏・B氏・C氏の順番で射撃を行うことになった。この時、A氏は誰に向けて拳銃を撃つべきだろうか? −−−−−−−−− 前提条件として、自分に向けて引き金は引かないこととします。 命中確率をそれぞれ、P(A)、P(B)、P(C)とします。 また、3人とも生きている場合、誰を狙うかをP(射手→目標)であらわします。 例えばP(B→A)は、Bの手番になったとき、Aを目標にする確率です。 P(B→A)+P(B→C)=1、P(C→A)+P(C→B)=1です。 1人が死んで、1対1の決闘になった時、以下の確率となります。 まず、Aが発射した弾が敵に当たった場合、Aは勝利します。 しかし、Aが外れた場合、決闘なので敵が外してくれるしか勝利はありません。 そうすると、Aが生き残る確率は、 P(A)+{1-P(A)}{1-P(敵)}P(A)+..=SUM(k=1,∞)P(A)[{1-P(A)}{1-P(敵)}]^k-1 となります。 SUM(a,b)は、数学で習ったシグマ記号で、aが下、bが上にくると考えてください。 Aよりも先に敵が射撃する場合、上式に{1-P(敵)}を掛けます。 上式は初項P(A)、公比[{1-P(A)}{1-P(敵)}]の無限等比級数です。 {1-P(A)}<1,{1-P(敵)}<1ですので、上式は収束し、 P(A)/[1-[{1-P(A)}{1-P(敵)}]]と変形できます。 これをP(A_duel_敵)とします。 敵が先に射撃する場合、 [{1-P(敵)}P(A)]/[1-[{1-P(A)}{1-P(敵)}]]となります。 これを{1-P(敵)}P(A_duel_敵)とします。 AがBを最初に狙った時、 AとCの決闘になる確率=P(A) そこでAが勝つ確率は、P(A){1-P(C)}P(A_duel_C)・・・(1) AがBを撃ちもらす確率={1-P(A)} そこでBがAを撃つ確率は、{1-P(A)}P(B→A) ここでもAが死なない場合、Cの手番へ BがAを撃たずCを撃つ確率は、{1-P(A)}P(B→C) ここでBがCを倒す確率は、{1-P(A)}P(B→C)P(B) そしてAとBの決闘になり、Aが勝つ確率は{1-P(A)}P(B→C)P(B)P(A_duel_B)・・・(2) BがCを撃ちもらした場合、Cの手番へ 同様に、 AがCを最初に狙ったとき、 AとBの決闘になる確率=P(A) そこでAが勝つ確率は、P(A){1-P(B)}P(A_duel_B)・・・(3) AがCを外す確率={1-P(A)} そこでBがAを撃つ確率は、{1-P(A)}P(B→A) ここでもAが死なない場合、Cの手番へ BがAを撃たずCを撃つ確率は、{1-P(A)}P(B→C) ここでBがCを倒す確率は、{1-P(A)}P(B→C)P(B) そしてAとBの決闘になり、Aが勝つ確率は{1-P(A)}P(B→C)P(B)P(A_duel_B)・・・(4) BがCを撃ちもらした場合、Cの手番へ (2)と(4)が同じですので、AがBを最初に狙う場合とCを最初に狙う場合の違いは、 (1)と(3)の差になります。 P(A)=1/3,P(B)=2/3,P(C)=1ですので、 (1) = (1/3)(0)(1/3) = 0 (3) = (1/3)(1/3)(3/7) = 1/21 つまり、約5%、Cを最初に狙うほうが有利となります。 −−−−おまけ−−−− A、Bが射撃をしてもどちらも外れて、まだ3人生きている場合、 AとBの手番は終了しているので、Cの手番になります。 実際は、Cに手番が行った時点で、P(C)=1なので、即座に決闘モードになるのですが、 もしもP(C)<1の場合どうなるかも一応計算します。 ただしこれは、AがBを撃ってもCを撃っても同じ結果となるため、 Aがどちらを撃つかに関しては関係ありません。 経緯はどうあれ、最初にA、Bどちらも外れる確率は{1-P(A)}{1-P(B)}です。 ここでCが(AでもBでも)撃ちもらす確率は{1-P(A)}{1-P(B)}{1-P(C)} →1巡して再びAの手番へ CがBを狙う確率={1-P(A)}{1-P(B)}P(C→B) ここでCがBを倒す確率は{1-P(A)}{1-P(B)}P(C→B)P(C) AとCの決闘モードになり、Aが勝つ確率は{1-P(A)}{1-P(B)}P(C→B)P(C)P(A_duel_C)・・・(5) 1巡で決闘モードになる場合、Aが勝つ確率P(A_win_1round)は以下のようになります。 P(A_win_1round)= (1)+(2)+(3)+(4)+(5)       = P(A){1-P(C)}P(A_duel_C)       + {1-P(A)}P(B→C)P(B)P(A_duel_B)       + P(A){1-P(B)}P(A_duel_B)       + {1-P(A)}P(B→C)P(B)P(A_duel_B)       + {1-P(A)}{1-P(B)}P(C→B)P(C)P(A_duel_C) = P(A)[{1-P(B)}P(A_duel_B)+{1-P(C)}P(A_duel_C)] + 2{1-P(A)}P(B→C)P(B)P(A_duel_B)       + {1-P(A)}{1-P(B)}P(C→B)P(C)P(A_duel_C) あとは無限巡まで同様に無限級数で収束させれば良いと思いますが、 少々複雑なので、実際の式を導入してみましょう。 ここでは、ガンマン達はお互いがお互いの技量を知っており、 撃たれたからといって、逆上したりして計算せずに撃ち返すことはしない、とします。 そうすると、技量の差から言って、P(B→C)=1,P(C→B)=1となります。 P(A_duel_B)=3/7,P(A_duel_C)=1/3 P(A_win_1round) = (1/3){(1/3)(3/7)+(0)(1/3)}          + 2(2/3)(2/3)(3/7)          + (2/3)(1/3)(1/3)          = 1/21+8/21+2/27          = 95/189 = 約50% 半分は生き残れそうです。 相手の技量がわからない場合、BとCがでたらめに相手を決めるとすると P(B→C)=0.5,P(C→B)=0.5として、 P(A_win_1round) = (1/3){(1/3)(3/7)+(0)(1/3)}          + 2(2/3)(1/2)(2/3)(3/7) + (2/3)(1/3)(1/2)(1/3) = 1/21+4/21+1/27=52/189          = 約28% となります。3割切ってます。 一般的に拡張すると、Aが勝つ確率P(A_win)は、 P(A_win_1round)+{1-P(A)}{1-P(B)}{1-P(C)}P(A_win_1round)+・・・  = sum(k=1,∞)P(A_win_1round)[{1-P(A)}{1-P(B)}{1-P(C)}]^k-1 で、無限級数の考え方を適用して、 P(A_win) = P(A_win_1round)/[1-[{1-P(A)}{1-P(B)}{1-P(C)}]] となります。(ただしP(A),P(B),P(C)は1より下) −−−−おまけ2−−−− 正解は「A氏は誰も撃たないでB氏に拳銃を渡す」らしいです。 つまり、BとCのどちらかが自滅するまで、 3回に1回命中する自慢の腕は披露しないことにするわけです。 そうすると、P(A)とP(A_duel_敵)は変わりませんが、{1-P(A)}=1となります。 P(A_win_1round) = (1/3){(1/3)(3/7)+(0)(1/3)}          + 2(1)(2/3)(3/7)          + (1)(1/3)(1/3)         = 1/21+4/7+1/9         = 46/63 = 73% これならかなりの確率で生き残れます。